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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第七十八想】
2007.02.01

今年もまた、忘れ得ぬ成人式

 今年の正月も、私の仕事は三日から始まりました。成人式が三日に開催されたからです。平成十三年の成人式開催以来、成人者のなかから実行委員を募り、式典を開催するか否かを含めたすべてについて決めていただくようにしてきました。そのような形での開催は今年で七回目になりますが、途切れることなく実行委員会の手によって開催されてきました。毎年、深く記憶に残る式典が続いています。今年も決して忘れ得ない式典となりました。

 

 「学校給食プログラム」というものがあります。これはWFP(国連世界食糧計画)が行う学校給食を通じた食糧援助のことです。海外に食料を依存しながらも飽食に浸る日本。私たちが年間に廃棄する食品の量は約二千二百万トン、そのうちコンビニエンスストアーやスーパーマーケットなどの小売店から排出される賞味期限切れの食品廃棄量は約六十万トン。これを一日に必要な食物摂取量から単純計算すると、毎日三百万人以上の食料を廃棄していることになります。かたやその一方で、世界の飢餓の状況をまとめたハンガーマップによると、約八億五千万人の人々が飢餓に直面しています。その中で慢性的な飢えの状態にある子供たちの数は約三億人といわれています。

 

 空腹にさいなまれる子どもたちにとって、命を維持するために「食べること」が「学ぶこと」よりも優先されるのは当然でしょう。つまり、飢えの状態にある子供たちにとっては、学ぶ権利など無いに等しいのです。そして子供たちが学ぶことのない国は、決して豊かになることはありません。飢えというものがまた次の飢えを生み、その結果、「貧困国」からすべての可能性を奪っているのです。WFPはこうした状況にある国々に学校給食を提供しています。実行委員会の成人者たちは「一生に一度の成人式を実りあるものにしたい」という思いで、五月の第一回実行委員会から成人式のテーマについて議論を重ねました。そして八月の実行委員会でWFP「学校給食プログラム」に対する支援が決定されたのでした。彼らが作った成人式典の資料にはこんなことが書かれていました。

 

 「私達は、WFP国連世界食糧計画『学校給食プログラム』に出会いました。今、世界では、三億人もの子どもが飢えに苦しんでいます。そのうち一億人以上が学校にも通えません。食べるという事が、学ぶこと、そして夢を叶えることに繋がるのです。わずか二十円で一人一食分の学校給食を支援できます。子どもたちの笑顔をひとつでも増やすために、平成十九年新成人の私達は『学校給食プログラム』を応援します。」

 

 通算で十六回の実行委員会を経て、いよいよ成人式当日。町トレーニングセンターアリーナでは、参加した成人者が持ち寄った品物を販売する「二百円10食バザー」と銘打った催しが行われました。実は実行委員会のメンバーを中心に成人式前にも活動は始まっていました。十一月のたかねピア秋祭りに「チャリティーバザー」を開催、十二月のキラキラフェスタでは「チョコバナナ」を販売していたのです。その益金は成人式終了時点で八七,九二五円。目標とする給食五千食分十万円には少し足りませんでしたが、WFPに送られる予定です。

 

 食べることに困ることなく成人を迎える自分たちがいる一方で、同じ地球上に飢餓という状況に直面している人々が存在していること。そして子どもたちを襲う飢餓は、人となるべき学習の機会のみならず二十歳までの生命さえも奪うものであること。今の自分達とその子達の状況は無関係のことではなく繋がっているのだという考え。現在の生活が他者の犠牲の上に成り立っているとすれば「自分ができることは何か?」との考えに思い至ること。見事な本物の創造力。そしてもっとすばらしいことは、「思うだけでなく、考えるだけでなく、語るだけでなく、祈るだけでなく、動くこと。」を彼らがしてくれたことでした。動けば様々な出会いが訪れて、夢が現実のものとなっていく。そんなメッセージを今年の成人者の皆さんからいただいた思いです。

 

 成人者の送る八七,九二五円は給食四,三九六食分であり、三億人の子どもを救うには小さな力に過ぎないかもしれませんが、先月号の「新年の挨拶」に書いた南米アンデス地方の民話「ハチドリのひとしずく」を立派に実践されたのだとも感じています。

 

 成人者に比して、とうの昔に成人者となっている私は、振り返って恥ずかしい限りです。

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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