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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

夢だより 風だより【第九十想】
2009.10.01

哲学者イチロー

 イチロー選手の素晴らしさは以前から知っていましたが、先日放映されたテレビの特集番組を見て、あらためて感じ入りました。九年連続の二百本安打という大リーグ新記録はとてつもない大記録ですが、あらためて素晴らしさを感じたのはその記録にではありません。インタビューに答えたその発言にでした。記憶をたぐって書きますので正確ではありませんが、こんな内容だったと思います。

 

 「高い打率を守ろうと思って打席に入るとつらい気持ちになります。でも、ヒットを一本でも多く打ちたいと思えば楽しめるんです。」

 

 なんという至言。物事に取り組むときの心構えの核心を突いた言葉です。先日の学童野球の開会式でも、イチロー選手の言葉を引用しながらこんなことを話しました。

 

 「通信簿やテストの点数だけを気にする勉強はつまらないけれど、昨日書けなかった漢字が書けるようになる、昨日解けなかった算数の問題が今日理解できるようになる、そんな勉強は楽しいにちがいないし、のびのびと能力が伸びていく様を思い描くことができます。常に他の人との比較の中で生きるのではなく、昨日よりも今日、今日よりも明日、どんなに小さな一歩でも前に進むことができたかどうか。そのことこそが、己に勝つという本当の勝利への道だと思います。みんなの無限の可能性を信じています。」

 

 そして次に心の中で自分自身に問いかけました。「選挙に勝つことだけを考えているとつらい気持ちになる。でも、この町を少しずつでも良い町にしたいとだけ考えると楽しくなる。」

 

 悲しいかな人間は、すぐに結論を求めたがりますし、他者との比較の中で自分の存在位置を確かめますから、言葉のように簡単でないことはわかっています。でも人間がそうであるからこそ、イチロー選手の言葉を脳裏に刻みたいと思います。一つの道を究めた人は、言葉にできない苦行を経ていることはもちろんですが、哲学者のごとき高みに到達するもののようです。記憶に残るイチロー選手の言葉を追記します。

 

 「僕は天才ではありません。なぜなら自分がどうしてヒットを打てるか説明できるからです。」

 

 「現役のうちは過去を懐かしんではいけません。」

■こちらのコラムに関して

こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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