指揮者 佐藤和男さん
一昨年、平成二十二年十二月四日に町 民ホールで開催された「真岡市民交響楽 団特別演奏会」、満員の聴衆を前にタクト を振ったのは高根沢町出身の佐藤和男さ んでした。その佐藤さんが七月十五日、 栃木県総合文化センター開館二十周年記 念公演「オペラ椿姫」で指揮をとります。 歌劇「椿姫」といえば作曲家ヴェルディ の代表作であり、世界のオペラ劇場の中 でも最も上演回数の多い作品の一つです。 今回は管弦楽が創立から四十年の実績と 実力を持つ栃木県交響楽団、ソリストは 栃木県オペラ協会、合唱は栃木県楽友協 会合唱団とまさに“オールとちぎ”の公 演です。チラシには、指揮者、副指揮者、 演出家の顔写真とプロフィールが載って いましたが、指揮者佐藤さんのプロフィ ールにだけ「高根沢町出身」と記され、 他の方々の出身市町は記されていません でした。
才能とたゆまざる努力。芸術文化から は最も遠くにいる自分には佐藤さんの苦 労を知る術もありませんが、物静かで常 に静謐を纏うかのような彼の内にある悲 愁や懊悩、孤高であらんとしながらも漂 う高邁と自足の爽やかな匂い。文化勲章 を辞退し続けた孤高の画家熊谷守一氏の 言葉「私は誰が相手にしてくれなくとも、 石ころ一つとでも、十分に暮らせます。 石ころをじっとながめているだけで、何 日も何ヶ月も暮らせます。」が、ふっと佐 藤さんの姿に重なりました。もちろん、 まだまだ熊谷守一氏の境地になってもら っては困るのですが、その心境に通じる 大きな芯を持っていると感じました。ま だ若く、将来への大きな可能性を秘めた 佐藤和男さんに、町民の一人として拍手 を送りたいと思います。同郷の人間の活 躍を自らの喜びと感じられることの幸せ とありがたさを噛み締めています。
JR跨線橋中橋の現況について
今日まで、昨年の大震災後の復旧に全 力を投じてきましたが、まだ一箇所だけ 手付かずの被災箇所があります。それは 宝積寺地内JR宇都宮線の中橋跨線橋で す。中橋は地震によって両側橋脚に接す る道路部分が陥没し通行不能となりまし た。その後、国の災害査定を受け、一刻 も早い開通に向けて町で直接復旧工事を 施工すべく作業に着手しましたが、この 箇所は線路敷きに近い工事であるという 理由からJRとの「近接工事協議」が必 要となりました。事前協議の段階では町 の直接施工でよろしいとのことでしたが、 本協議の段階で、「当該工事は軌電停止が 必要な工事である」との理由で、町の直 接施工ではなく鉄道事業者つまりJRへ 委託する工事とするとのJRの判断があ り、町直接の復旧工事が出来なくなりま した。現在、担当課である都市整備課で は一刻も早い協定書の締結と早急な工事 着手をJR側に求めていますが、未だに 協定書締結の日時さえ不明な状況です。
さらに国の災害査定では七百十万円と いう査定金額でしたが、JR側からは三 千六百六十万円の工事委託金額が提示さ れました。その差額は二千九百五十万円 であり、災害補助金の増額について町職 員を何度も国土交通省に出張させてきま したが、最悪の場合にはこの差額がすべ て町一般会計での負担となる可能性があ ります。災害であるにもかかわらずです。 しかし中橋の通行止めによって生じる地 域住民の皆様の不便を考えれば金額の問 題ではありません。町議会へもその状況 を報告したところ、ご理解をいただき、 予算は通していただきました。
今回の中橋復旧は大災害によるもので あり、他の被災箇所については国、県の 迅速な対応によってほとんどの工事が完 了し、残る工事は大規模な地すべり対策 工事のみとなっています。中橋の復旧が 遅れてもJRには何の不都合もないのか もしれませんが、町民にとっては生活に 密着した大切な道路です。世界一正確な 車両運行や交通弱者にとってのJRの存 在、JR線がある事の計り知れないメリ ットには敬意を表したいと思いますが、 かつて国鉄の分割民営化時には多額の負 担を国民が負ったことも事実です。民間 とはいえ公共交通を担う事業者でもあり ます。国の災害査定の約五倍の工事金額 であっても町は支払わなければならない のですから、JR側には、町民 目線に立った一刻も早い復旧工 事着手を求めて行きたいと考え ています。
JR当局には不愉快な文章か もしれませんが、国民とJRが 末永く共存していく為にも、私 たちの次の世代がこのようなジ レンマを抱えない為にも、あえ て書かせていただきました。ご 理解をいただきたいと思います。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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