「雪花菜」と書いて「きらず」と読む。“おから”の別名である。
この「雪花菜」という何とも美しい言葉を教えてくださったのは、農村女性の組織である「豆豆(まめまめ)クラブ」(直井幸子代表)の皆さんだった。
元気あっぷむら敷地内にある農林産物加工施設の中に、豆豆クラブの運営する「雪花菜」はある。贅沢なほどたっぷりの高根沢産大豆と天然ニガリを使った豆腐は箸でつまんでも型くずれしない。お一人様五枚限定の大人気ガンモドキには、シイタケ・ニンジン・ゴボウ・ヤマイモ・昆布・ゴマ・魚のすり身などがこれでもかというほど入っていて、食べる人が眼を丸くする本物なのである。(他にもあるが字数の関係で省略、ごめんなさい)
その「雪花菜」も一周年を迎えることが出来た。施設の使用料を払いながら、独立採算・自助努力・自己責任の原則のもと、成功するか失敗するか大きなリスクを背負っての出発だった。毎朝六時からの豆腐づくりは、家庭を持ち農業に従事している農村女性にとって決して楽なことではない。家事を考えれば三時四時に起床しなければならないだろう。家族の理解と励ましがなければ続けられることではなかった。
幸いというべきか努力の結果当然というべきか、連日売り切れが続いている。忙しいだけに疲労の色も濃い。人気があるということは、品質を落としてはお客様に申し訳ないという新たなプレッシャーを与えつづけてもいる。でもガンバル。新たな生き方として、挫折するわけにはいかないという自負と信念が彼女たちを支えている。たいへんであれ、自らの努力によって得た成果が本物であるとの考えに貫かれている。そしてその姿が家族や地域の理解を得、それが新たな活力となって、二十一世紀の町づくりの方向を私に問うているのである。
政府の地方分権推進委員会において中心的役割を担われ、自治体学会の代表でもある大森彌千葉大学教授は次のように述べている。
「これからは住民を一方的に楽にさせる行政ではなく、住民もまた何らかの身銭を切る行政へと転換していく必要がある。それには民意を信頼し、民意を喚起する以外にないが、その基本は情報公開・住民参加・説明責任であり、困難な課題を乗り越えるべく悪戦苦闘する自治体の姿勢である」
本町においては既に情報公開条例が制定され(たとえば町長交際費は使途先を含めて誰でもすぐに閲覧できる)、行政評価システム・バランスシート・ISO9001の導入についても具体的検討に入っている。そしてこれらのことは全てのスタートにすぎない。
「雪花菜」に思いを馳せ、また、多くのことを教えられたなあと感謝して食べる今日の豆腐の味は、格別である。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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