「町長さんはどんな仕事をしているのですか?」
元気いっぱいの質問が教室にひびきわたる。ここは町立東小学校1年生の教室。私への最高の歓迎は子どもたちの元気な質問で始まる。
「そうだね。難しい質問だね。ひとことでは言えないくらいたくさん仕事があって、いろいろな仕事をしているんだよ」
子どもたちの反撃は手厳しい。
「いろいろな仕事をしているという答えは、答えになっていないと思います」
そのとおり。私の答えは答えになっていない。校舎の窓から南を見渡すと建設中の「にじいろ保育園」が視界に入った。
「東小学校の南に、今、保育園を建てているよね。あの保育園には学童保育も出来るからみんなが遊ぶことも出来るんだけど、保育園を建てるのも役場の仕事なんだよ」
「なーんだそうか。町長さんはあそこで保育園を建てているんだ!」
「? ? ? …」
子どもたちの心に嘘はない。ここで「企画・立案」などと単語を並べても意味のない事だ。では何と答えればいいのか。私はここで窮してしまった。
じつは9月20日の阿久津小を皮切りに、子どもたちと一緒に給食を食べようという学校訪問をはじめた。加藤哲教育長も一緒である。加藤教育長はポケモンのエプロン、私はドラえもんの出で立ちである(このエプロンは初日の阿久津小でお借りしたものだ)。゛子どもたちが給食で食べているものも知らないで町長といえるか ゛、ということが訪問の動機であったが、訪ねてみると実に多くのことを子どもたちに教えられた。冒頭の東小でもそうであった。
現在役場には16の課と3つの局がありその仕事は多岐にわたっている。ひとことで言い表せないのは嘘ではない。私自身、毎日必死で書類を読み、関係法令を調べ、一通りは町のことを分かったつもりになっていた。が、しかしである。
小学1年生の質問に、1年生の言葉で、1年生が分かるように説明できなくて、何が分かっているといえるのか、それで町長といえるか、という事である。自分がいかに不勉強であったか、奥の奥まで理解していなかったか、私はそのことをいやというほど知らされて帰ってきた。大きな宿題を与えられて帰ってきたのである。
私はこのことを町の課長会議で報告した。本当に仕事を理解するとはどういうことなのかを、自戒の意味も込めて話をした。役所の姿の原点を発見できたからである。
10月11日の北高根沢中を最後にこの給食訪問は終了した。学校現場には自然のままでとお願いしたが、いろいろ気を使われたかもしれない。しかしこの訪問を通して、子どもたちの個食や朝食抜きの実態、給食に対する評価等、得るものも多かった事も事実である。この場をお借りして先生方と子どもたちにお礼を申し上げるとともに、「また必ず給食を食べに行くからよろしくね」とお願いをして第19想としたい。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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