思い出の道
仁井田から元気あっぷむらに至る町道五二五号線。その歩道の草むしりを日課にするのは”やなぎやさん“の愛称で親しまれる金子イチノさん(八十一歳)。地域や道路を利用する方々から「寒い中、歩道をきれいにしていただいて本当に頭が下がる思い」と感謝の声がよく聞かれます。
「お父さんと手をつないでよく散歩した思い出の道をきれいにしたい」それが金子さんが草むしりを続ける理由。平成十七年十一月にその夫の庄助さんが亡くなって「思い出の道」への奉仕活動が始まりました。全長約三㎞の道路を終えるのに約半年。それを年に二回こなします。二十年来医者にかかったことがなく「健康な体をもらったことをみんなに感謝」、「通行者に気持ちよく利用して欲しい」という気持ちも継続を後押しします。そして「地元の人たちが親切に声をかけてくれることが嬉しい」とおっしゃっていました。
広辞苑で陰徳という言葉を引くと「人に知られないように施す恩徳」と書いてありました。金子さんの草むしりは、誰かに知ってもらうためにやられていたわけではありませんが、地域の方々から金子さんの草むしりの話が寄せられたのです。
舞踊歴三十八年、三喜流師範のピンと背筋ののびた金子さんには、いつまでもお元気で、私たちの「心の太陽」であって欲しいと願っています。
いきいき農村
二月十六日に栃木県公館で「第二回栃木県元気な農業コンクールいきいき農村部門表彰式」が行われました。その中の農村環境保全向上の部において、伏久地区農地・水・環境保全向上対策推進協議会(菊地正昭会長)が奨励賞を受賞され、福田知事から表彰を受けられました。当日、栃木県町村会長として私も授賞式に同席することができました。この賞は①多様な主体による協同体制、将来像の明確化、人材育成②地域の特性を活かした工夫や自立に向けた意識醸成③地域の環境保全や農業振興等への効果を把握しながらの取り組み④環境教育や積極的な情報発信、などの視点から審査が行われ受賞者が決定されたとのことです。
伏久地区の皆さんは、制度としての「農地・水・環境保全向上対策」が出来るずっと以前から、ホタルの保護や鯉の放流による農村環境の維持保全に汗を流してこられました。ホタルの生息する周囲の農地では、収量減を覚悟の上で農薬の使用を控えてもこられました。その活動の原点にあるのは、かつて自分たちが親にしてもらったことや育ってきた環境を次の世代にも残したいという素朴な気持ちであったのです。
「子どもたちよ、子ども時代をしっかりと楽しんでください。おとなになってから、老人になってから、あなたを支えてくれるのは子ども時代の”あなた“です」。作家の石井桃子さんがこんな言葉を残したことを「児童館きのこのもり」の田代館長さんが教えてくださいました。まるで伏久の方々の心を表しているようで脳裏に浮かんだのでした。
伏久の皆さんの行動は、誰かに褒めてもらう為にやってきたことではありませんが、今回の受賞によって、これまでの汗が報われたような気がしてとても嬉しく感じました。表彰式の来賓席に座っていて、高根沢町の町長であることを誇りに思いました。心から感謝申し上げます。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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