新しい年を迎えました。東日本大震災の傷跡が残るなか、苦難にじっと耐え、それでも明日に向かって努力し続けておられる町民皆様に対し、尊敬と感謝の思いを禁じ得ません。
昨年の東日本大震災ではわが町も甚大な被害を受け、本年は行財政運営の大幅な軌道修正を余儀なくされます。その中で、まずは教育施設や道路、地すべり箇所などの災害復旧にすべての資源を優先的に投入し、次なる復興へと繋げていきたいと考えています。一方で、町民皆様との約束である地域経営計画後期計画にある施策についても、当初の予定よりは時間がかかるかもしれませんが着実に取り組んでいきます。しかし、限られた財源を復旧復興へと優先的に振り向けなければならないなかで、これまで行ってきた事業の一部予算縮減が避けられないことも事実です。町民皆様には何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
昨年の大震災後、町教育委員会宛に、「子どもたちへ」と題するメッセージが町民の方から寄せられました。その文章は、学校で先生方から児童生徒に伝えていただきましたが、同時に、今日まで私自身を支えてくれた文章でもありました。今年もまた、何度も何度も読み返し、前へ進んで行きたいと思います。そのメッセージは次のようなものでした。
子どもたちへ
東日本大震災が起きてからこの一カ月、きみたちは何を思い、何をしただろうか。
津波に押し流される家、壊滅した町、避難所、ガレキの山、原子力発電所・・・・・。
大勢の人が、大切な人を、思い出を、学校を、家を、仕事を失くした。立ち直れないくらい傷ついた。
これまで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなった。
一瞬の出来事で私たちの暮らしは足元をすくわれた。
自然の力の前に人間はあまりにも小さく弱い。
でも、思い出してほしい。
震災直後から私たちが目にしたのは、人と人とが助け合う姿だった。
被災した人同士が、少ない水や食べ物を分かち合った。
自分よりつらい人のために苦しさをこらえた。
がんばろうと励まし合い、絶対に復興するぞと誓い合った。
そして、日本中が支援のために動いた。長い道のりを共に歩く決意を固めた。
傷つき困っている人のために「今自分にできることは何か」、きみたちも真剣に考えたにちがいない。
節電、義捐金―被災地に行かなくても助け合いの輪に入ることはできる。
少しの不自由は笑って受け入れる、未来を奪われた人の分までいっしょうけんめいに生きる―それだって立派な支援だ。
今回の震災はこの町にも大きな被害をもたらした。今も、つらく苦しい思いをしている人がいる。
二度と起きないでほしい。でも、絶対に起きないとは誰にも言えない。 だから、忘れないでほしい。
生きていることに感謝する気持ちを。今を大切にする気持ちを。人を思うこころを。
私たち大人もきみたちを全力で守る。守らせてほしい。
きみたちはこの町の宝だ。きみたちの笑顔を、きみたちの夢を、きみたちの未来を全力で応援し続けます。
今、この国や私たちは、大きく変わろうとしている気がします。「3・11」を機に、利己主義を助長した「戦後」が終わり、利他主義が復権する「震災後」が始まる。
本年もよろしくお願い申し上げます。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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