高根沢ちゃんぽん
高根沢町が、大災害時でも同時被災の可能性の低い長崎県雲仙市との間で「災害時相互応援協定」を結んだことは町民の皆様にお知らせしました。応援協定締結と前後して、雲仙市とはいろいろな面でお互いに協力し合い、それぞれの良いところ・持ち味を高めていこうと交流を始めています。
「ちゃんぽん番長」こと雲仙市職員林田真明氏。雲仙市小浜町生まれの彼は一九九一年旧小浜町役場に入り、二〇〇五年七町合併で雲仙市職員に。雲仙・普賢岳の噴火災害でさびれた小浜温泉街を「なんかばせんといかん!」との思いから、好物の小浜ちゃんぽんでの町おこしを始めました。ちゃんぽんといえば長崎。ちゃんぽんは一九世紀の終わり頃長崎で考案され、二〇世紀の初めに長崎からの温泉客が多かった小浜温泉に持ち込まれました。その後熊本・天草方面や北九州、四国へも伝わったとされています。番長は仕事の傍ら、ちゃんぽんを出す旧小浜町の十七店舗を食べ歩き、スープは豚骨か鶏ガラか、麺はどこの麺を使っているか。友人や後輩と何度も店を訪れては、味の特徴を確認し取材を続けました。そして二〇〇七年四月、その集大成として「小浜ちゃんぽんマップ」を作成発行。今では印刷部数十万部を超え、休日の温泉街にはマップを手に散策する観光客が目立つといいま す。林田番長はその他にも、地場産ジャガイモを使った「じゃがメル」の開発や、北海道網走市とデットヒートを繰り広げる「世界一の長さの焼きちくわ対決」の雲仙市サイドの仕掛け人でもあり、テレビ東京「ソロモン流」、日本テレビ「秘密のケンミンSHOW」でも特集されました。
番長の称号のほかに「全国ご当地ちゃんぽん連絡協議会会長」の肩書きも持つ彼によれば、「スープや麺の違いでその地域の歴史が分かる」そうです。例えば、佐賀県武雄市(「佐賀のがばいばあちゃん」のロケ地)の武雄ちゃんぽんは、ただひたすらに盛りの良さと高カロリー。炭鉱の町として栄え炭鉱労働者が多かった背景があります。また八幡製鉄所で知られる北九州市戸畑区の戸畑ちゃんぽんの特徴は蒸し麺。茹で上がりの早い蒸し麺は忙しい製鉄マンにぴったりでした。さらに北海道網走市の網走ちゃんぽん。なぜ西日本中心のちゃんぽんが網走に?雲仙市との「焼きちくわ対決」が縁となり、地場産農海産物をなんでも入れられるというちゃんぽんの特性が生きました。まさにちゃんぽんの融通無碍さの勝利です。
さてここから高根沢町。林田番長の情熱とオーラに感化されたのか、元気あっぷむら大広間楡木料理長を中心に「高根沢ちゃんぽん」の開発が始まりました。スープは鮮やかな緑色。小浜ちゃんぽんのスープをベースに、高根沢産の小松菜をペースト状にして入れ、さらに豆腐店「雪花菜(きらず)」の豆乳も入っています。このスープを始めて見て飲んだ時、その美味さに唸ったのはもちろん、岡田前町長がいつも言っていた「青い空、緑の大地、夢の町」の合言葉を思い出しました。おお!これぞまさに緑の大地。日本唯一の緑のスープ。楡木料理長によれば、最初はほうれん草のペーストを試みたそうですが、ほうれん草の個性が強すぎて他の食材の味を邪魔してしまう。そんな中で試行錯誤の後に小松菜に辿り着いたそうです。しかも小松菜は栄養価が高く、とくにカルシウム含有量が高い。豆乳の植物性たんぱく質も入ったこのスープは、見て良し、飲んで身体に良し、味も良し。さらに麺は栃木県産の小麦粉。具材は「農業王国高根沢」の逸品の数々。今秋のデビューに向けて現在も進化中の「高根沢ちゃんぽん」のレシピは、すべて公開する予定でもあるそうです。
ちゃんぽんの語源は、辞書によれば「ごった煮という意味の中国語チャンホウから」とありました。酒の“ちゃんぽん”はよくありませんが、町づくりでの“ちゃんぽん”は 「コラボレーション」「異業種連携」「ネットワーク化」と同義です。難しい言葉を用いなくとも「ちゃんぽん」でよかったのです。
余談ですが、今注目されている「高根沢産にっこり梨のピューレ」を担当した職員S君に「にっこり王子」の称号を、そして自らを「口だけ番長」と命名しようとしたところ、産業課のKリーダーから「口出し番長」と修正されました。これからも適度に「口出し番長」の職責を全うしようと思います。
■こちらのコラムに関して
こちらのコラムは、高橋かつのりが高根沢町長在任時、高根沢町の広報誌『広報たかねざわ』で執筆していたコラム『夢だより 風だより』を、高根沢町の許可を得て転載しております。
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