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この国を滅ぼしたくない

かつのりコラム

高橋かつのりが自身の考えや想いを綴るコラム『夢だより 風だより』

キリンビール栃木工場操業終了感謝会
2010.11.10

キリンビール栃木工場操業終了感謝会

 栃木県外へ視察に行き、町の紹介をするときに、

「キリンビールの工場がある町、それが高根沢です」と胸を張って言ったことが何百回あったでしょうか。

 高根沢町にとって、キリンビールは、町を代表するシンボル的存在でありましたし、財政面はもとより、産業振興、生涯学習や環境教育、さらには町民の抱く故郷への誇りなど、多岐にわたって数々の恩恵を授けてくださいました。

 昨年の閉鎖発表から今日まで、その御恩に感謝する気持ちはいささかも変わっておりません。「本当に、ありがとうございました」に尽きる思いです。

 

 また一方で、それだけ大きな存在であったからこそ、寂しく、残念であることも、正直な気持ちです。

 

 しかし、今回のことで、私たちは、たくさんのことを学ぶことができました。

 

 それは、私たちが、水や空気のごとく当たり前のように享受してきた恩恵が、実は、先人たちが苦労して残してくれたものであったこと、また、キリンビールの懸命な企業努力の賜物であったことを、あらためて知ったことでした。

 そして、そのことから導き出されたことは、人は今を生きているけれども、今のためだけに生きているのではなく、人も、企業も、次の世代のために、生きているということでした。

 

 私たちが水や空気のごとく受けてきた恩恵は、先人たちが、次の世代である私たちの為に生き抜いてくれたからですし、今回の工場閉鎖も、少子化に伴う国内市場の縮小という現実の中で、キリンビールが次の世代においても持続可能な発展をしていくための、已むに已まれぬ苦渋の判断であったと理解しています。町においても同じです。町民の皆様に痛みをもたらす厳しい行財政改革を、敢えて断行してきたことも、この町が、次の世代においても、持続可能な発展を遂げて欲しいとの思い以外の何物でもありません。

 

 これから、わが町は、キリンビールという、町の誇りを失うことによって、寂しく、本当に厳しい現実に直面してまいります。

 しかし、我々は負けません。我々は諦めません。先人たちが我々にしてくださったように、今度は我々が、次の世代のために、どんな苦労があろうとも、厳しさに挑戦していきます。幸いにして、今回の事態に直面して以降、町管理職員の皆さんは、自ら給与の減額を申し出てくれました。町議会の皆様も同じです。さらに、町民の中からは、自らが、町を創っていこうという機運も生まれてきました。そして一番ありがたかったことは、誰一人、閉鎖に対して恨み言を言う人はなく、皆が、一様にキリンビールに対しての「感謝」の思いを持っていてくださったことでした。

 

 願わくば、栃木県民高根沢町民の心の中に、永遠にキリンビールが「我々の誇り」として残っていただけるような、良い方法と方向性を見い出したい。そのために、行政として出来ることは何なのか。これからも、キリンビール御当局とは、緊密な連携をとることが出来れば幸いであると思っておりますし、そのことを衷心よりお願いしたいと思います。

 

 結びになりますが、今回、体育館やそれに付随する土地、さらには、工場所有の美術品などを、高根沢町に寄贈いただけるとのこと、松沢社長様始めキリンビールの皆様に重ねて感謝申しあげまして、万感尽きませんが、挨拶と致します。

 

 私の手帳には、全国11工場のロット番号表が貼ってあります。これまで、全国各地に行ってキリンビールを飲むときに、ロット番号を確認して「ああ、これは何処の工場産だ」と楽しく語らったことを思い出します。これからは、栃木工場のロット番号「27」を手帳から消さなければなりませんが、「27番」は私の中で永遠に不滅です。ありがとうございました。

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